【生理学③】中枢神経系と大脳の構造・機能 & 鍼灸臨床への応用

中枢神経系と大脳の構造・機能 & 鍼灸臨床への応用

人間の身体をコントロールする司令塔である「中枢神経系」。今回は、脳と脊髄の基本から、大脳の各パーツがどんな働きをしているのか、詳しくわかりやすく解説していきます。記事の最後には鍼灸師向けのワンポイントアドバイスも載せていますので、ぜひ臨床のヒントにしてください!

脳の基本!「灰白質」と「白質」の違いとは?

中枢神経系は、大きく分けて**「灰白質(かいはくしつ)」と「白質(はくしつ)」**という2つの組織で構成されています。

  • 灰白質神経細胞が密集している部分です。樹状突起を介して多数のシナプスが作られている情報処理の拠点となります。
  • 白質:神経線維の集まりです。神経線維を包む髄鞘(ずいしょう)が白いため明るく見え、情報を遠くへ伝える線路のような役割を果たします。

これらの配置は、部位によって異なります。

  • 大脳と小脳:外側が灰白質、内側が白質です。
  • 脊髄:大脳などとは逆に、内側灰白質外側白質になっています。
  • 間脳や脳幹:白質の中に灰白質が散在しており、この部分を「核」と呼びます。

中枢神経系の4つの大きな「統合機能」

中枢神経系は生体内外の情報をまとめあげる(統合する)役割を持っており、大きく4つの機能に分けられます。

  1. 高次神経機能:大脳皮質で行われる、学習、認識、抽象化、言語、判断、創造などの高度な働きです。
  2. 感覚系の統合:生体内外からの情報は求心性神経を通じて中枢へ伝えられ、大脳皮質に投射して感覚が生じます。過去の経験などと照合されて正確な認識がなされるほか、一部は視床下部や大脳辺縁系に送られて情動などを生み出します。
  3. 運動系の統合:随意運動は大脳皮質の連合野で決定され、皮質運動野・大脳基底核・小脳などで運動プログラムが作られます。最終指示は運動野から発せられ、脳幹や脊髄の運動神経へ伝わります。
  4. 自律機能の統合:生命維持に必要な循環、呼吸、消化、代謝などの自律機能の大部分は、間脳や脳幹、脊髄で統合されています。
コラム反射ってなに? 

生体が受けた刺激に対し、意思とは無関係に起こるステレオタイプの反応を反射といいます。
その情報の伝わるルートを反射弓(はんしゃきゅう)と呼び、

「刺激 → 受容器 → 求心性神経 → 反射中枢 → 遠心性神経 → 効果器 → 反応」

という経路をたどります。骨格筋の運動反射のほか、自律神経反射や内分泌反射などがあります。また、後天的な学習によって獲得するものを条件反射といいます。

【鍼灸師向けワンポイントアドバイス】

「反射弓」と鍼灸の基本メカニズム(体性内臓反射) 体表(ツボ)に鍼や灸で刺激を与えると、その情報は「求心性神経」を通って脊髄や脳へ伝わります。そこで統合された情報が「遠心性(自律神経)」を介して内臓へ伝わり、胃腸の働きを活発にしたり、血流を改善したりします。これを体性内臓反射と呼び、鍼灸が内臓疾患に効く最大の生理学的根拠となります。

脳の主役!「大脳」の基本構造

大脳は中枢神経の中で他を圧して大きく発達した部分で、**「終脳(しゅうのう)」とも呼ばれます。 大脳は「大脳縦裂」によって左右の半球に分かれており、表面には多数の溝(こう)と、溝によって隆起した回(かい)**があります。

特に深く大きい溝(外側溝、中心溝、頭頂後頭溝)によって、大脳の表面は以下の4つの領域(葉)に分けられます。

  • 前頭葉(ぜんとうよう)
  • 頭頂葉(とうちょうよう)
  • 後頭葉(こうとうよう)
  • 側頭葉(そくとうよう)

大脳の表面を覆う灰白質は発生学的に新しいため「新皮質」と呼ばれます。その内側には古皮質などで構成される「大脳辺縁系」があり、さらに内側の白質の中には「大脳基底核」が存在します。

大脳新皮質マップ:どこで何をしている?

大脳新皮質は神経細胞が6層の層状に配列しており、部位ごとに異なる働きを担当する「機能局在(きのうきょくざい)」がみられます。

運動野(身体を動かす)

  • 場所:前頭葉の中心溝の前方にある「中心前回」に位置します。
  • 働き:骨格筋の運動に関与します。内側から外側に向けて、下肢、体幹、上肢、頭部の運動に対応する細胞が並んでいます。手や手指、舌など、精緻な運動を司る部位は皮質上で広い面積を占めています。

感覚野(感覚を受け取る)

  • 体性感覚野:頭頂葉の中心溝の後方(中心後回)にあり、触覚、温覚、冷覚、痛覚や深部感覚を司ります。
  • 視覚野:後頭葉の内側面に位置します。
  • 聴覚野:側頭葉の上部に位置します。
  • 味覚野:大脳皮質の中心溝下部付近に位置します。

③ 言語野(言葉を操る)

言語機能は通常、左半球に存在します。

  • 運動性言語中枢(ブローカ野):前頭葉の運動野近くにあり、言葉を作ったり、発声のために舌や口などの運動を調節したりします。
  • 感覚性言語中枢(ウェルニッケ野):側頭葉の聴覚野近くにあり、言葉の意味を理解する働きを持ちます。

連合野(考える・判断する)

運動野や感覚野は、大脳皮質全体からみればごく一部にすぎず、残りの広い新皮質を連合野といいます。感覚情報を統合し、理解・判断・意志決定を行います。特に前頭連合野は思考や意志に関わり、ヒトで著しく発達しています。

脳の奥深くに潜む重要エリア

大脳の奥や内側面にも、生きていく上で欠かせない重要な領域があります。

大脳辺縁系(古皮質など)

大脳半球の内側面にある皮質群で、発生学的に古い新皮質以外の部分からなります。本能行動や情動行動の発現、記憶などに関与します。

  • 海馬(かいば):側頭葉の内側部に位置し、記憶に関わります。目や耳などからの短期記憶情報を一時的に保持し、長期記憶として蓄積すると考えられています。
  • 帯状回(たいじょうかい):大脳の内側面を前後方向に走る脳回で、共感や報酬の予測に基づく意思決定などに関わります。

【鍼灸師向けワンポイントアドバイス】

大脳辺縁系・視床下部」と鍼のリラックス効果 「鍼を受けると眠くなる」「ストレスが和らぐ」という患者さんは多いですよね。これは、鍼の心地よい響き(体性感覚刺激)が、情動や本能を司る大脳辺縁系や、自律神経の最高中枢である視床下部に伝わり、交感神経の緊張を抑えて副交感神経を優位にするからです。不眠症やうつ傾向、自律神経失調症の治療において、脳の奥深くの構造をイメージしながらアプローチすることが大切です。

大脳基底核

大脳基底核は大脳半球の深部にあり、尾状核、被殻、淡蒼球などからなります。

  • レンズ核被殻淡蒼球を合わせた名称です。
  • 線条体被殻尾状核を合わせた名称です。
  • 働き:大脳皮質から運動の計画を受け取り、運動プログラムを作り皮質へ送り返します。姿勢の制御や、円滑な運動の遂行に関与しています。

6. 情報のハイウェイ:大脳の白質

白質は新皮質の内側に存在し、以下の3種類の神経線維束に分類されます。

  1. 連合線維:同一半球内の皮質の間を連絡する短い線維です。
  2. 交連線維:左右の大脳半球を結ぶ線維束です。大脳縦裂の底にある**脳梁(のうりょう)**や、前交連、後交連などがあります。
  3. 投射線維:大脳と、脳幹や脊髄などを結ぶ線維です。尾状核・視床とレンズ核の間を通る**内包(ないほう)**は太い神経線維の束で、大部分は下方へ集まって中脳の「大脳脚」へと移行します。