【体のしくみ】呼吸器系のしくみと働き

呼吸器系のしくみと働き基礎

私たちが普段、意識しなくても行っている「呼吸」。そして言葉を紡ぎ出す「発声」。
これらはすべて、呼吸器系の精巧な構造によって支えられています。

今回は、呼吸器系の基礎から、外呼吸・内呼吸の違い、鼻から気管支に至る気道の構造、そして声が出る仕組みまで、わかりやすく解説していきます!

呼吸の基本:外呼吸と内呼吸、そして「換気」

呼吸には、私たちが普段イメージする息継ぎだけでなく、体内でのガスのやり取りという重要なプロセスが含まれています。呼吸器系とは気管、肺、胸郭のこと

  • 外呼吸(肺呼吸):代謝で生じた二酸化炭素(CO_2)を血液から肺へ戻し、体外へ排出し、
            外気と血液の間で行われるガス交換のこと。

  • 内呼吸(組織呼吸):血液と組織(細胞)の間で行われるガス交換のこと。

換気:肺で気体の入れ替えが起こる現象。吸息時に胸腔容積が広がると空気が肺に入り、呼息時に胸腔が縮むとガスが押し出されます。この呼吸運動の繰り返しによってガス交換が可能になります。

外気を通す「気道」の構造と驚くべき防御機能

鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支の通路を気道と呼びます。気道は単なるパイプではなく、空気のコンディショニング(加温・加湿・異物の除去)を行う高機能なフィルターです。

① 鼻腔と副鼻腔

  • 鼻毛と線毛上皮:鼻の入り口(鼻前庭)にある鼻毛や、鼻粘膜の線毛・分泌腺によって、吸気に含まれるホコリや細菌などの異物をキャッチし、侵入を防ぎます。
  • 加温・加湿:鼻粘膜や毛細血管が富んでおり、冷たく乾燥した空気を温め、湿気を与えて肺に送ります。
  • 副鼻腔:鼻腔の周囲にある骨の空洞で、頭蓋骨を軽くする役割を持ちます。

② 咽頭(いんとう)

  • 鼻腔・口腔の奥にあり、下方で喉頭と食道に通じる長さ約12cmの管です。
  • 粘膜、横紋筋膜、外膜の3層からなり、嚥下運動に関わります。上部には耳管咽頭口があり、中耳とつながっています。
  • 咽頭の上部には咽頭扁桃、咽頭の側壁には耳管咽頭口がある

③ 喉頭(こうとう)と声帯(発声のメカニズム)

喉頭は第4〜第6頸椎の高さにあり、気管の上方に位置する、発声と誤嚥(ごえん)を防ぐための重要な器官です。

  • 軟骨の働き:
    • 甲状軟骨:最大の軟骨で、いわゆる「のどぼとけ」を作ります。
    • 喉頭蓋軟骨:食物を飲み込むときに喉頭蓋が上に引き上げられ、蓋(フタ)となって気道に食物が入らないように関所のような役割を果たします。
    • 被裂軟骨:有対性、輪状軟骨後部
    • 輪状軟骨:喉頭の最下位にある
  • 声帯と発声のしくみ:
    • 声帯は甲状軟骨の後ろから被裂軟骨の間にある
    • 声帯ヒダ(声帯靭帯と声帯筋)と声帯裂の間を呼気が通る際、筋肉の緊張や弛緩によって声帯が振動し、声が生まれます。
    • 反回神経の支配
    • 静かな呼吸時は声帯ヒダが緩んで声帯裂が開いていますが、発声時には声門閉鎖筋群が収縮し声門開大筋の弛緩で声帯裂が閉じ、呼気流を遮断して振動を起こします。
    • ここで生まれた声は、咽頭・口腔・鼻腔・副鼻腔などで共鳴・修飾され、母音や子音の区別がつけられます。

頸椎の高さ(C4〜C6)と喉頭・声帯の関係

  • 喉頭は第4〜第6頸椎の高さに位置しています。この高さは、頸部周辺のトリガーポイントや、天突・人迎・水突といった頸部の経穴(ツボ)の深度を立体的にイメージする上で直結します。喉頭や気管支のトラブル、あるいは声の不調を訴える患者さんに対して、首の緊張(胸鎖乳突筋や斜角筋群など)を緩める施術は、頸部の循環改善や呼吸補助筋の緊張緩和に直結します。

④ 気管と気管支

  • 気管:輪状軟骨の下縁に始まり、胸郭を下る長さ約10〜12cm、直径約2cmの管です。
  • 軟骨と平滑筋:外壁には気管軟骨・気管支軟骨分節状でU字型の「硝子軟骨」があり、気道がつぶれないように支えています。後方の軟骨がない部位には平滑筋が存在します。多毛上皮や分泌腺(気管腺・気管支腺)がある。
  • 左右の気管支の違い:
    • 気管は左右に分かれて気管支となり肺に入りますが、左気管支は細く・長く・分岐角度が大きいのに対し、右気管支は太く・短く・水平に近いという特徴があります。
    • このため、誤飲した異物は右気管支に入りやすいという臨床的な特徴があります。

「副交感神経(迷走神経)」と発声・嚥下の深いつながり

  • 喉頭の筋肉(内喉頭筋)の多くは迷走神経(反回神経など)の支配を受けています。鍼灸治療による自律神経調整(副交感神経優位への誘導)は、咽頭・喉頭の緊張緩和や、ストレス性の咽喉頭違和感(梅核気など)の改善アプローチと深く結びついています。

肺

⑤ 肺の構造

肺は胸郭の内腔、すなわち胸腔の大部分を占める半円錐状の器官で,左肺と右肺よりなる.
 右肺は上・中・下葉,左肺は上葉と下葉よりなる.右肺は左肺よりやや大きい.
先端部を肺尖といい,底面を肺底という.各肺の中央部で気管支および肺動静脈が出入りする部位を肺門という.肺の表面は胸膜に被われ,中では気管支が分岐を繰り返して肺胞に達して,空気と血液との間のガス交換が行われる.

気管支の枝

左右の気管支は肺に入った後,葉気管支(右で3本,左で2本),区域気管支と分岐を繰り返す.
各々の区域気管支が支配する肺領域を肺区域という. 肺区域は右で10区域,左で8区域(1+2が合し,7がない)に分けられる. 気管支はさらに細気管支,終末細気管支,呼吸細気管支となり肺胞に達する.気管支は末梢に行くに従って軟骨は少なくなる.細気管支に達すると軟骨は消失し,代わりに平滑筋や弾性繊維が豊富になる.細気管支の平滑筋は交感神経活動が亢進すると弛緩し,管径は拡張し,空気が通りやすくなる.逆に,副交感神経活動が亢進すると収縮し,管径は縮小し,空気が通りにくくなる.

肺胞

肺胞は1層の肺胞上皮細胞に囲まれた球状の小胞であり,内部の気体を肺胞気という.肺胞の直径は0.1〜0.2mm,総数は両肺で約3億個,ガス交換の行われる総呼吸面積は約70m²と非常に広い. 肺胞は弾性繊維に富むが,平滑筋はなく,自ら収縮,伸展することはできない.呼吸運動に伴う胸腔内圧の変化によって受動的に大きさを変える.

肺胞壁は主としてⅠ型肺胞上皮細胞で覆われる.Ⅰ型肺胞上皮細胞は非常に薄い扁平上皮細胞で,ガス交換に働く.肺胞は多数の毛細血管によって取り囲まれる.Ⅰ型肺胞上皮細胞と毛細血管内皮細胞の間には薄い基底膜が存在し,これら3層を血液空気関門という.血液空気関門を介して肺胞気と血液の間のガス交換が行われる. 肺胞壁にはこの他に,Ⅱ型肺胞上皮細胞が存在し,肺胞がつぶれるのを防ぐための表面活性物質(サーファクタント)を分泌する.また肺胞のマクロファージは免疫に働く.

肺の動静脈

肺動静脈は肺におけるガス交換に関わる機能血管である.肺動脈は肺門から肺内に入り気管支とともに分岐しながら肺胞に至り,毛細血管網を形成する.毛細血管が合流して肺静脈となり肺門へ戻る. 気管支動脈は肺の組織に酸素や栄養を供給する栄養血管であり,肺門から肺内に入り気管支とともに分岐して肺組織に分布する.

胸郭,胸膜と縦隔

胸郭

胸郭は肺を収め,胸壁と横隔膜よりなる.胸腔を拡大・縮小させる呼吸運動に関与する. 胸壁の前部には胸骨,後部には脊柱があり,これらを肋骨が結合し,肋骨間を肋間筋が覆っている.胸郭上口は胸部と頸部の境であり,第1胸椎,第1肋骨,胸骨柄からなる.食道や気管,総頸動脈や鎖骨下動脈,横隔神経,迷走神経,交感神経幹などが胸郭上口を通過する.胸郭下口は胸部と腹部の境であり,横隔膜が張っている.

胸膜と縦隔

胸壁の内側と肺の表面はいずれも胸膜(肋膜)という漿膜によって覆われ,それぞれ壁側胸膜,臓側胸膜(肺胸膜)と呼ばれる.胸膜は狭い袋状につながり,その内部を胸膜腔という.胸膜腔には少量の漿液からなる胸膜液(胸水)が存在し,肺の滑らかな動きを助ける.病気としての胸水(胸水貯留)は,胸膜液が異常に増加した状態をいう.
左右の胸膜腔に挟まれた部分を縦隔という.縦隔内には心臓および心臓に出入りする血管,気管,食道,胸腺,胸管,横隔神経,迷走神経,交感神経幹などが含まれる.