【生理学1】循環系と心臓の構造・機能まとめ

循環系と心臓の構造・機能まとめ

こんにちは!今回は生理学・解剖学の教科書から、私たちの身体のライフラインである循環系と、ポンプとして働き続ける心臓の構造やメカニズムについて、分かりやすく徹底解説していきます。

循環系と心臓血管系

心臓血管系とリンパ系循環系という。心臓血管系は生体内の物質輸送系で、体循環肺循環がある。心臓は血液を送るポンプである。心臓は右心室右心房左心室左心房の4つの部屋に分けられる。
動脈と静脈の間には一般に毛細血管の領域が存在する。

  • 体循環では血液が左心室動脈→毛細血管静脈右心房に戻る。栄養を供給し、細胞の代謝によって生じたCO_2(二酸化炭素)や老廃物は戻る。
  • 肺循環では血液が右心室肺動脈→肺毛細血管肺静脈左心房に戻る。脈は脈血を運ぶ。、脈は脈血を運ぶ。

【鍼灸師のワンポイントアドバイス】西洋医学と東洋医学の「心(しん)」
 西洋医学の心臓が「血液を全身に送るポンプ」であるのに対し、東洋医学(中医学)における「心(しん)」は、血脈を主る(つかさどる)だけでなく、精神活動や意識をコントロールする「神(しん)」を宿す場所と考えられています。動悸や不眠、精神不安があるときは、心臓の働きだけでなく、東洋医学的な心のバランスを整えるアプローチが有効です。

動脈と静脈、毛細血管

心臓から血液を送り出す血管を動脈、心臓へ血液を送り込む血管を静脈という。一方、O_2(酸素)に富む鮮紅色の血液は動脈血と呼ばれ、CO_2に富む暗赤色の血液は静脈血と呼ばれる。
※体循環系の動脈は動脈血を運ぶが、肺循環系の動脈は静脈血を運ぶ。静脈は静脈血を運ぶが、肺静脈は動脈血を運ぶ。

【鍼灸師のワンポイントアドバイス】冷えと毛細血管・血流 
末端の毛細血管までしっかりと血液(動脈血)が行き渡らないと、冷えやコリ、痛みの原因になります。鍼治療には、自律神経に働きかけて血管を拡張させ、末梢の微小循環(毛細血管の血流)を改善する優れた作用があります。「手足の冷え」が気になる方は、血流のポンプ機能を高めるツボ(例:太渓や内関など)へのアプローチがおすすめです。

心臓の解剖学

(1) 心臓の構造

心臓は血液を送るポンプである。成人では握りこぶりより少し大きい。縦隔の中で、正中からやや左よりに偏って位置する。

心臓上部を心底、心臓の下部先端を心尖という。心尖は後方を向き、心尖は左前方に尖る。心臓の上端はほぼ第2肋間の高さにある。心尖は成人では第5肋間の高さ、正中線から7〜9cm左にあり、体表で心拍動を触れることができる。

心臓は左右2つの部分に分けられ、左心と右心はそれぞれ、心房心室に分けられる。左右の心房間の壁を心房中隔、左右の心室の壁を心室中隔という。心房より心室の方が壁が厚く、心房の壁を送り出す左心室は右心室よりも壁が厚い。

(2) 心臓の弁

心臓の4室の出口には一方向にのみ開く弁があり、血液の逆流を防ぐ。

左心房の出口には僧帽弁(または二尖弁)がある。右心房の出口には三尖弁がある。これらを房室弁という。房室弁の縁は腱索によって心室の乳頭筋と繋がり、弁が反対方向にひるがえらないよう帆状はんじょうの形をしている。

左心室と右心室の出口にはそれぞれ大動脈弁肺動脈弁がある。これら動脈弁は、下に凸の袋状の形をした、3枚の半月状の弁からなる。

(3) 心臓壁と心膜(図5-5)

心臓壁は内側から外側に向かって、心内膜心筋層心外膜の3層からなる。外側をさらに結合組織性の膜がゆるく覆っている。

心内膜:内皮細胞と薄い結合組織からなる。

心筋層:心筋繊維がらせん状に心臓を取り囲む。

臓側心膜(心外膜)壁側心膜:心筋は薄い漿膜性の臓側心膜に覆われ、これを心外膜という。漿膜性の臓側心膜大血管の起始部で折り返して壁側心膜となり、線維性の結合組織と合流して心臓を包む。これら心臓の外側を覆う膜を心膜といい、臓側心膜と壁側心膜の間にある心膜腔漿液で満たされ、心臓の滑らかな動きを助ける。

【鍼灸師のワンポイントアドバイス】胸郭の柔軟性と心臓の動き 
心臓を包む心膜や、その外側にある肋骨・胸郭(第2肋間や第5肋間など)が硬くなると、心臓のなめらかな伸縮運動が制限されてしまいます。鍼灸では、胸椎や肋骨周りの緊張をゆるめることで、呼吸や心臓の拡張・収縮運動を物理的にサポートすることができます。

心筋の生理学

心筋は横紋筋からなり、不随意筋であり、自律神経の支配を受ける。また、心筋は自動能をもち、心臓を体外に取り出しても自動的に拍動を続ける。

心筋細胞の活動電位は、細胞外に取り出してナトリウムイオンへの流入に続いて、カルシウムイオンへの流入する。このため、長い脱分極が生まれ活動電位の持続時間収縮の持続時間も骨格筋に比べて長い。

心筋は、新たな活動電位を発生できない不応期も長い。このため骨格筋のような強縮は起こらず、心筋は常に単収縮である。これは心臓がポンプとしての役割を果たすために重要である。つまり一定時間以上、心筋が弛緩している間に、血液が心臓に流入する。

心筋細胞同士はギャップ結合をもつ介在板かいざんばんによって吻合しており、そのため、心房や心室は、各々があたかも1個の細胞のように電気的活動が同調して起こり、機能的合胞体を形成する。

心筋は伸展の度合いに応じて大きな収縮力を発生する。これをスターリングの法則という。この特性のために、右心房に流入する静脈流量が多いほど、心臓の拍出量が増加する。心筋には収縮に適した固有心筋と、興奮の発生と伝導に適した特殊心筋がある。

4.心筋と骨格筋の比較

比較項目心筋骨格筋
筋繊維横紋筋横紋筋
細胞間の電気的連絡介在板のギャップ結合により電気的に連絡。機能的合胞体絶縁
活動電位の絶対不応期長い(ポンプ機能に適する)短い
単収縮/強縮単収縮のみ強縮が多い
自動能有(刺激伝導系)
神経支配不随意筋・自律神経随意筋・運動神経
その他固有心筋(収縮に適する)と特殊心筋(興奮の発生と伝導に適する)に大別

【鍼灸師のワンポイントアドバイス】不応期とリラクゼーションの重要性 
心筋に長い不応期があるおかげで、心臓は休むことなく一定のリズムでポンプ作用を続けられます。人間の身体も同様に、常に緊張し続ける(強縮のような状態になる)のではなく、しっかりと「脱力・休息(リラックス)」する不応期(オフの時間)が必要です。自律神経を整える鍼灸施術は、まさに身体にその「休息のリズム」を取り戻す手助けをします。

5. 刺激伝導系

心臓の拍動リズムは、右心房の上大静脈の開口部近くにある洞房結節で発生する。ここをペースメーカーという。洞房結節の電気的活動は心房に伝わり、心房を収縮させる

心房と心室は線維束という結合組織で隔てられているため、心房の固有心筋から心室の固有心筋へ興奮は直接には伝わらない。右心房と右心室の境界近くにある房室結節に達した興奮は、心室中の線維三角を貫通するヒス束を通って心室に伝わる。心室において、興奮はヒス束の分岐された左脚と右脚を伝って下り、さらに枝分かれしたプルキンエ繊維を通って心室全体に伝わり、心室が収縮する。

洞房結節、房室結節、ヒス束、左脚と右脚、プルキンエ繊維などの特殊心筋を刺激伝導系といい、特殊心筋で構成されてる。

【鍼灸師のワンポイントアドバイス】自律神経と心拍リズム 
ペースメーカーである洞房結節は、交感神経や副交感神経(自律神経)の強い影響を受けて心拍数を調整しています。ストレスや緊張が続くと交感神経が優位になり、心拍数が上がって心臓に負担がかかります。鍼刺激によって副交感神経を優位に導くことは、心臓のリズムを穏やかに整えるうえで非常に理にかなっています。

6. 心臓の活動と検査

(1) 心周期

心臓の収縮、弛緩の周期を心周期という。収縮期は①等容性収縮期と②駆出期拡張期は③等容性拡張期と④充満期に区分される。心周期は約0.8秒。このうち収縮期は約0.3秒、拡張期は約0.5秒持続する。

  • ①等容性収縮期すべての弁が閉じる状態で心室が収縮する。心室内容積は一定で、心室内圧が上昇する。
  • ②駆出期心室内圧が動脈圧を越えると動脈弁が開き、血液が動脈に駆出される。心室内容積は一定で、心室内圧が動脈圧よりも低下すると動脈弁が閉鎖する。
  • ③等容性拡張期すべての弁が閉鎖した状態で心室が弛緩する。心室内容積は一定で、心室内圧が下がる。
  • ④充満期(流入期):心室内圧が心房内圧より低下すると房室弁が開き、血液が心室に流入し充満する。

(2) 心音

胸壁に聴診器を当てると、心臓の拍動ごとに発生する音を聞くことができる。これを心音という。第I音の直後に第II音室が続き、「ドックン」とすると、「ドッ」が第I心音、「クン」が第II心音に当たる。第II心音の後にわずかに第III心音や第IV心音が聴こえることもある。

  • 第I心音等容性収縮期の頃に聞こえる。低音でやや長く続く音。主に房室弁の閉鎖によって生じる。
  • 第II心音等容性拡張期の頃に聞こえる。高音で短い持続性の音。主に動脈弁の閉鎖によって生じる。

(3) 心拍数

1分間の心臓の拍動数を心拍数という。健常成人の安静時の心拍数は約70回/分である。心拍数が高い場合を頻脈(>100回/分)、低い場合を徐脈(<60回/分)という。運動時、発熱時、精神的な興奮などに生理的な頻脈がみられる。心拍のリズムはほぼ一定だが、吸息時は呼息時よりわずかに速い。これを呼吸性不整脈といい、小児で著しい。

(4) 心拍出量

1回の心臓拍動によって左右心室から拍出される血液量を1回拍出量という。正常成人安静時の1回拍出量は約70mlである。(ヤクルト1個分くらい)

一般に心拍出量という場合は毎分心拍出量を示す。激しい運動をすると、1回拍出量と心拍数がともに増加して、心拍出量は25L程度にも達する。

(5) 心電図

心筋は収縮に先行して活動電位を発生する。心筋の活動電位の総和を体表から記録したものが心電図で、P、Q、R、S、T波がある。P波は心房興奮開始QRS群は心室興奮開始T波は心室興奮消退の過程を表す。心電図は興奮の伝導の異常、不整脈、心筋障害などの心臓の異常診断に広く用いられる。例えば心房から心室への伝導速度が遅延するとPQ間隔が延長する。

【鍼灸師のワンポイントアドバイス】脈診(みゃくしん)と心臓の活動 
臨床の現場で鍼灸師が必ず行う「脈診(手首の橈骨動脈の拍動をみる検査)」は、まさにこの心拍数や心拍出量、血管の弾力性、そして全身の気血の状態を読み取る東洋医学の診断法です。西洋医学的な心電図や心音の仕組みを理解しておくことで、東洋医学的な脈の見立てもより深く納得できるようになります。